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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第20章 溺れた兄妹
「心配……かけたよね」
「…心配ッ…した!ほんとに心配した…!!」
「……すまない」
「お願いだから!わたしをひとりにしないで…!! どこかに行ったらイヤだ、イヤだ、イヤだよ!? お兄ちゃん…!!」
起き上がることができない伊月に、花菜のほうから触れにいく。
彼の胸の上に突っ伏した花菜は大声で空気を震わせながら、力いっぱいすがり付いた。
病室の外にもまる聞こえだろう。
せっかく伊月が無事に目覚めたというのに、いっこうに興奮が収まらないようだ。
喉が張り裂けそうなほど彼女が叫び続けるのは……きっと耳を塞ぐ代わりなんだと思う。伊月はぼんやりと感じていた。
「どこにも行かないで…!? わたしとっ…ずっと一緒にいて」
《 兄妹はいつか、離ればなれになるんだ 》
昨日告げたばかりのこの言葉……花菜はすでに忘れているようだ。
「……わかって、いるさ」
でもだからと言って今、彼女に向けて同じ刃を突き立てられるか?