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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第4章 発芽
それが今朝になって、まだここにある。
“ 投げた私が悪いんだけど…。片付けてくれてもいいのに ”
同じ掃除場所の同級生達を思いながらむくれた花菜。
いや、彼らにそんな期待をするのは止めるべきだと自分を諌めながら、彼女はそれを拾い上げた。
ちゃんと自分で片付けよう。
掃除ロッカーのある屋上へ向かって階段を早足で駆け上がった。
タタタっ
あまり運動しないから、すぐに息が切れてくる。
それでも花菜が走る理由は、昨日抱いた不快な記憶をなるべく早く忘れたいから。
ロッカーの中に
閉じ込めて──そして、教室に行く。
そのために走るしかなかった。
「…ハァっ…ハァっ」
屋上に続く踊り場にある掃除ロッカーを目指して、二階…三階と上っていった。