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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第4章 発芽
踊り場に到着。
二つ並んで置かれたロッカーの片方を開け、開けると同時に滑り落ちてきたちり取りと一緒にホウキを収めた。
閉めた扉に手を付けて花菜は荒い息を調える。
「ハァ…っ…」
全力疾走と言っても、最後の一階分は体力尽きて、もはや歩くのと変わらないくらいのスピードだったに違いない。
慣れないことをして無駄に疲れた。
…けれど、今の気分はどちらかと言えば爽快なのだ。
今日の掃除時間、また彼女はここに来て同じホウキを取り、この階段を掃くことになる。
昨日の同級生たちに馬鹿にされるかもしれなくて
だから…逃げるという道もあるけれど
『 花菜は間違っていないさ 』
きっと──今日は逃げない。
この世で誰よりも尊敬する人に、花菜は認めてもらっているから。もう何を言われても怖くない。
お兄ちゃんさえ、いてくれるなら
....
「──…?」