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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性
──…
「ただいま、って? へぇ、いい匂いだね」
同日の夜。
帰りが遅くなった伊月がアパートのドアを開けると、廊下に立つ花菜がフライパンを手に出迎えた。
「おかえりなさい!」
いつも伊月が使う縦縞のエプロンを、今夜は彼女が身に付けている。男性用だから小柄な彼女が着ると丈が余っていた。
そんな花菜が作っているのはハンバーグだ。
これまた彼女が持つと大きなフライパンに、二つのハンバーグが並んでいる。
「ご飯にする? それか先にお風呂にはいる?」
「ええ?……あ、じゃあご飯かな」
「ならもう少し待っててね」
“ それともワタシ? とか言われたらどうしようかと思った… ”
伊月は嫁をもらった覚えなどなかったが、花菜は嬉しそうに新婚夫婦のテンプレ会話を繰り広げた。
本人にそれをしている自覚があるのかはさておき、驚いた様子の伊月を見て彼女は満足げである。