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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性
「驚いた? わたしもご飯くらい作れるようにならないとって頑張ってみたよ。お兄ちゃんに任せきりは嫌だし」
そう言いながらフライ返しを操り、ハンバーグの両面に焼き色を付けて蓋を閉める。
後は弱火で中まで火を通して…
ケチャップソースで煮詰めたら出来上がりだ。
花菜が兄の部屋で居候(イソウロウ)の身になり、初めての手料理。
実は数日前に学校の図書室で料理の本を借りて、作り方を勉強しておいたのだ。
「初めてにしては上手くできたよ?」
「うんうん、美味しそうだね」
「ふふ…」
「食欲をそそるいい匂い。だけど──…その、換気扇は回しておこうね」
「あ」
言われて気付く。
フライパンから上がる芳ばしい匂いは、彼女の知らぬ間に廊下だけでなく部屋中に充満していたのだ。
「忘れてた…っ」
外から帰って来た伊月にそれを教えられ、花菜は慌てて換気扇をフル稼働させた──。
「……、どう、かな?」
「上手にできてる」
「良かったぁ」
そんなこんなで少しの騒ぎがあったものの、それからすぐに完成した夕食を無事に二人で囲んでいる。