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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第1章 初髪、初鏡
 元旦の朝は、ただ静かだった。

 (ん……)
神依は閉じた瞼に僅かな光を感じ、ぼんやりと意識を覚醒させた。まだ禊達も休んでいるのだろうか、耳を澄ましても生活の音がしない。
 起きようかとも思ったが、しかし今日は童ともども禊から寝坊を許された貴重な日。神依も、今ばかりは心地好い二度寝を貪ろうと醒めかけた意識を再び緩めた。
 というのも淡島の巫覡達は晦日の宵からずっと奥社の神事に詰めており、神依もその一員として祭祀に参列、一年で最も特別視される日の出を拝み、年明け最初の進貢を終えた後ようやく帰宅して睡眠にありつくことができたのだ。
 そしてそんな神依の元、晦日の昼から居座り酒盛りをしていた日嗣と猿彦だったが、神依が戻った時には日嗣だけが残り出迎えてくれた。神依が不在の間は男同士、禊や童を相手に盃を傾けていたらしい。どうやらこの“御令孫”は高天原の神事に参加する気はさらさら無いようだった。
 「本日はお泊まりになりますか?」
「ああ。だが今日は神依も疲れて帰ってくるだろうし、部屋は別々で構わない。それに朔(ついたち)は“事始め”にも良くないしな」
「ご心配いただかなくとも、元より共寝の準備など致しません。ご希望がございましたら、神依様のお部屋の脇の縁側に床の準備をさせていただきますが」
「……お前は俺を野晒しにする気か」
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