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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第1章 初髪、初鏡
結われた髪と差された紅を合わせれば、その姿は艶やかにも、変化(へんげ)していた。
 「──いいか初瀬、宵までだからな」
「はいはい。なら宵までは、日嗣がしてくれないぶん僕がちやほやしてあげるからね、神依」
そして玄関を出て門をくぐるまで、何度も何度も念押しを重ねる日嗣にふと思い付いたように神依が呟く。
「というか、日嗣様は来ちゃいけないんですか?」
「……は?」
「いやいやいや、それは駄目だよ絶対駄目! そもそもこれは正月行事で、僕が年神だからその中心になれるんだから!」
「あ、そっか……そうですよね」
確かに言われてみればその通りで、中心に据え置く神を違えては、きっとこの世界では良くない流れをもたらすこともあるだろう。
 しかしそれに日嗣もまた何かを思い付いたようで、初瀬に促され歩き始めた神依を呼び留めると数歩手を引き、こっそりと告げた。
 「──あれに負けぬほど着飾って迎えに行くから、脱け出す準備をしておけ。とりあえずおだてまくって、酒を浴びるほど飲ませればいい」
「……ふふっ」
そうしたら、またどこかに連れていって貰えるだろうか。
 色事はさておき、内緒で催す二人だけの新年会は、またしっとりと心を交わせるもののような気がした。
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