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熱・愛・契約~熱・愛・事変
第3章 混・乱・事変
二種類の紐を手にし、寄り目になりながら無言の堺に、しのは何気無く言った。
「本当にもう帰っちゃうんですか……?」
「ぶげっ!」
堺は咳き込み、目を白黒させた。
しのはそんな堺の背中を擦ろうと手を伸ばすが、堺は弾かれたように飛び退く。その敏捷さはまるで荒野でライオンに見つかり逃げ出す草食動物のようだ。
「だっだだだだいじょうぶ……っ……げほっ……すぐ治まるので――ああっ」
堺はよろけ、後方のドアに頭を強打した。
「堺さんっ?」
「おおおお――星が……星が」
冗談ではなく、鈍い痛みと共にカラフルな星が目の裏から飛び出てくる。
心配そうに眉をひそめて歩み寄るしのを掌で制しながら、堺はなんとか紐の千切れた靴を履いてドアを開けた。

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