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彼の秘密
第18章 二人の時間
彼は俺の腕を引いて人混みの中を抜けていく、掴む手を払おうとは思わないがそれすらも許さないくらいの力で締め付けられる

彼の顔を伺おうとしたが、歩む足の速度が早く油断すると軽くこけそうなくらいなため付いていくので精一杯だった。

彼が向かった場所は予想をしていない場所だった

よく、澄達とは遊びに行くが彼も来るとはイメージになかった
それは俺もまだ会長としてのレッテルをいくらか貼ってるのからだろう
その場所というのはカラオケだった

流行の音楽や昔懐かしい音楽が次々に流れ部屋からは楽しそうな声が漏れている
見るからに楽しいが溢れる空間は今の自分達の気分とは違いすぎて居心地が悪い

だが彼はそんなことなど関係なく受付をする
が、その前に気になることがひとつあった。

「副会長?」
カウンターにいたのはまさかの副会長だった
彼には先日会ったばかりだが、彼に素っ気ない態度をとってしまったことへの少しの罪悪感があり視線をあわせずらかった

「いらっしゃいませ、こちらの紙にお名前と生年月日、住所をお書きください
・・・で、今日は何のよう?」
一応営業の対応をしたあと、ちらっと俺をみて少し考える素振りで先輩に耳打ちするのが聞こえた
「いつもの部屋で」

「まさか、ヤル気か?」

「やるって何が?」
何故か驚く彼をよそにすらすら記入を進め彼には見向きもしない

「いや 、まぁそれならいいけどよ。
ほら、鍵」
指で鍵を回しながらぽっと先輩の前に落とした

「ありがと、じゃあ・・・一時間ほど借りる」

それを受け取り、また俺の腕を掴んで引っ張られた
「あっ・・・待っ」
ぎりっと握られる腕が痛い

その背中を頬杖をつきながら見送る氷室はボソッと呟いた
「あーぁ、まさかあいつがねぇ」
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