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恋の行方を探してください【完結】
第47章 【四十七話】誘拐
美哉はどうやら紫紺の名前が分からないことに戸惑っているようだったので、もう一度、名乗ることにした。
「明楽紫紺(あきら しこん)だ」
「どっちも名前みたいで面白い」
最初に名乗った時と同じ感想を言われて、紫紺は思わず泣きそうになってしまった。
涙ぐみそうになるのを必死でこらえて、ふんっとそっぽを向けば、わたわたと慌てる美哉がいた。その反応も一緒で、余計に泣けてきた。
「あ、ごめんなさい……」
「いや、いいんだ。……それよりも、腹、減ってないか」
「お腹より喉が渇いた」
身体を起こしてあげて、コップに水を入れて渡すと、遠慮がちに飲んだ。
「ありがとう」
「腹、減ってるだろう? お粥を作ってくる」
まだ少し赤い顔をしている美哉をベッドに寝かせ、紫紺は部屋を出た。
ドアを閉めると、紫紺は思わずため息を吐いた。
紫紺の父は、紫紺が幼い頃、前の与頭(くみがしら)であった由臣の母を守り、亡くなったと聞いた。それを聞いた紫紺は、絶対に御庭番にはならないと宣言して、母とともに小早川から離れて、今まで生きてきた。
それなのに──。
与頭が現れたと古坂と名乗る男性から聞かされた時、心が騒いだ。だけれども、紫紺は絶対に御庭番にはならないと告げて、この山小屋へと逃げてきた。
逃げてきたけれど、胸騒ぎを覚えて、若葉小屋の側へとやってきたら、案の定、美哉は一人で建物を出て、弓月当麻に追われていた。
父と同じ運命をたどるかもしれないと思ったけれど、美哉を見た途端、助けなければならないと本能が感じて、気がついたら手を伸ばしていた。
それにしても、自分はなんて最低なことを美哉に対して口にしたのだろう。
そう思いながら、紫紺は階下へ向かった。
「明楽紫紺(あきら しこん)だ」
「どっちも名前みたいで面白い」
最初に名乗った時と同じ感想を言われて、紫紺は思わず泣きそうになってしまった。
涙ぐみそうになるのを必死でこらえて、ふんっとそっぽを向けば、わたわたと慌てる美哉がいた。その反応も一緒で、余計に泣けてきた。
「あ、ごめんなさい……」
「いや、いいんだ。……それよりも、腹、減ってないか」
「お腹より喉が渇いた」
身体を起こしてあげて、コップに水を入れて渡すと、遠慮がちに飲んだ。
「ありがとう」
「腹、減ってるだろう? お粥を作ってくる」
まだ少し赤い顔をしている美哉をベッドに寝かせ、紫紺は部屋を出た。
ドアを閉めると、紫紺は思わずため息を吐いた。
紫紺の父は、紫紺が幼い頃、前の与頭(くみがしら)であった由臣の母を守り、亡くなったと聞いた。それを聞いた紫紺は、絶対に御庭番にはならないと宣言して、母とともに小早川から離れて、今まで生きてきた。
それなのに──。
与頭が現れたと古坂と名乗る男性から聞かされた時、心が騒いだ。だけれども、紫紺は絶対に御庭番にはならないと告げて、この山小屋へと逃げてきた。
逃げてきたけれど、胸騒ぎを覚えて、若葉小屋の側へとやってきたら、案の定、美哉は一人で建物を出て、弓月当麻に追われていた。
父と同じ運命をたどるかもしれないと思ったけれど、美哉を見た途端、助けなければならないと本能が感じて、気がついたら手を伸ばしていた。
それにしても、自分はなんて最低なことを美哉に対して口にしたのだろう。
そう思いながら、紫紺は階下へ向かった。