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恋の行方を探してください【完結】
第52章 【五十二話】家族になろう
*
目が覚めたら、目の前に由臣の寝顔があった。
周りを見渡すと、見慣れた由臣の寝室。いつの間に戻ってきたのだろうか。
とそこで、いつもの展開であれば、ナカに入ったままなんてあり得ると思ったけれど、その様子がなく、美哉はホッとした。
安堵しきった表情で眠っている由臣の顔を改めて見ると、目の下に濃いクマができていて、寝ていなかったことがよくわかった。
そろり、と眠っている由臣の頬に触れると、前よりも線が細くなってしまったような気がして、複雑な気分になった。
イケメンで御曹司だなんてお断りだし、最初から色々とひどいことをしてきたというのに、放っておけない。そればかりか、今ではいなくてはならない人になってしまった由臣に、段々と腹が立ってきた。
「馬鹿」
と一言呟けば、由臣の長いまつげがゆっくりと瞬き、焦げ茶色の瞳が現れた。
「……美哉」
「おはようございます」
「あぁ、おはよう。……というには無理がある時間だが」
明かりがついていないため、部屋の中は暗い。それでも、カーテンの隙間から明かりが洩れてこないところを見ると、今が夜であることは容易に知れた。
「色々と言いたいことはあるが、とりあえず、お帰り」
と由臣に言われれば、美哉はぐっと心に来て、言葉を失った。だけど小さくうなずくことだけはできた。今、口を開いたら、泣いてしまいそうだった。
両親が亡くなり、この先もずっと独りで生きていくと思っていた。お帰りと言ってくれる人はできないと思っていた。
それなのに、目の前の由臣は、美哉が欲しかった言葉をくれた。
「その泣きそうな顔、そそるな」
美哉の感動を打ち消すその言葉に、美哉は思わず由臣の頬をぺちり、と叩いた。
「手が早いのは相変わらずか」
「由臣さんの口が悪いからです!」
「そうか、俺のせいか」
「そうです」
といつものやり取りが戻ってきたことに気がついて、先ほどまで泣きたかった気持ちが、浮上してくるのだから不思議だ。美哉は自然に笑っていた。
「泣き顔もいいけど、美哉はやっぱり笑っていたほうがいい」
「…………」
「なあ、美哉」
目が覚めたら、目の前に由臣の寝顔があった。
周りを見渡すと、見慣れた由臣の寝室。いつの間に戻ってきたのだろうか。
とそこで、いつもの展開であれば、ナカに入ったままなんてあり得ると思ったけれど、その様子がなく、美哉はホッとした。
安堵しきった表情で眠っている由臣の顔を改めて見ると、目の下に濃いクマができていて、寝ていなかったことがよくわかった。
そろり、と眠っている由臣の頬に触れると、前よりも線が細くなってしまったような気がして、複雑な気分になった。
イケメンで御曹司だなんてお断りだし、最初から色々とひどいことをしてきたというのに、放っておけない。そればかりか、今ではいなくてはならない人になってしまった由臣に、段々と腹が立ってきた。
「馬鹿」
と一言呟けば、由臣の長いまつげがゆっくりと瞬き、焦げ茶色の瞳が現れた。
「……美哉」
「おはようございます」
「あぁ、おはよう。……というには無理がある時間だが」
明かりがついていないため、部屋の中は暗い。それでも、カーテンの隙間から明かりが洩れてこないところを見ると、今が夜であることは容易に知れた。
「色々と言いたいことはあるが、とりあえず、お帰り」
と由臣に言われれば、美哉はぐっと心に来て、言葉を失った。だけど小さくうなずくことだけはできた。今、口を開いたら、泣いてしまいそうだった。
両親が亡くなり、この先もずっと独りで生きていくと思っていた。お帰りと言ってくれる人はできないと思っていた。
それなのに、目の前の由臣は、美哉が欲しかった言葉をくれた。
「その泣きそうな顔、そそるな」
美哉の感動を打ち消すその言葉に、美哉は思わず由臣の頬をぺちり、と叩いた。
「手が早いのは相変わらずか」
「由臣さんの口が悪いからです!」
「そうか、俺のせいか」
「そうです」
といつものやり取りが戻ってきたことに気がついて、先ほどまで泣きたかった気持ちが、浮上してくるのだから不思議だ。美哉は自然に笑っていた。
「泣き顔もいいけど、美哉はやっぱり笑っていたほうがいい」
「…………」
「なあ、美哉」