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夏が来たら
第5章 疑念
親密な二人だったが、秋生は決して絢子に触れようとはしなかった。


顔を合わせたときや別れ際に、友情の印のような握手を交わすだけだ。


二人きりで過ごせる最後の日、絢子は秋生が自分に触れてくれることを期待した。


手を繋いで歩きたい、髪を撫でてほしい、頬に触れてほしい、そして、唇を奪ってほしい…。


絢子は叶わない願いに、胸を焦がし続けていた。


お互いの別荘で夜を過ごしても、シンデレラみたいに真夜中には別れの時が来てしまう。


秋生さんは私を女性として見ているわけじゃないのかな。


私は女性として魅力的じゃないのかな。


それとも、秋生さんは男性が好きなのかな。


答えの出ない堂々巡りに、絢子は苦しんでいた。
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