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夏が来たら
第7章 夏が終わっても
絢子は、まだ夏の熱が残る東京の町を歩いていた。


避暑地での出来事は、まるで夢の中の出来事のように現実味を失っていた。


秋生さん。


そもそも秋生さんなんて、存在しなかったのかもしれない。


あまりにも退屈を感じていた、私の想像の産物かもしれない。


でも、秋生さんの唇の感触は今でもはっきり思い出せる。


そして、携帯電話に残された「黒川秋生」の電話番号とメールアドレス。


絢子は何度か電話をしたりメールを送ったりしたが、結局連絡が取れなかった。


絢子は秋生を忘れようとしていた。


「必ず迎えに行くから。それまで待っていてほしい」


そんなセリフも、きっと大勢の女の子に言っているに違いない。


ひと夏の恋だったな。


カフェのガラス越しに、残暑に喘ぐ街を見ながらそう思った。

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