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夏が来たら
第2章 来訪者
目が合った瞬間、絢子の心拍数がぐっと上昇した。


穏やかな表情、少し上がった口角、そよ風になびく髪、すらりとした立ち姿。


まるで少女マンガから飛び出してきたような男性の容姿に、絢子は呆然とした。


「いきなりすみません」


青年は頭を下げ、丁寧に詫びた。


「いえいえ、そんな…」


絢子は口ごもる。


よたよたジョーがドアから出てきて、男性の足元で控えめに匂いを嗅いだ。


男性はジョーを見て笑顔になり、軽く彼の背中をなでた。


その自然な動作が、絢子には好もしく見えた。


それから彼は絢子に向き直り、口を開いた。


「あの、横井さんの別荘はご存知ですか」


横井さんの別荘は、10分離れたところにある「お隣さん」だ。


「ええ。この先ですよ」


「よかった」


男性は心底ほっとした笑顔を浮かべた。


その無邪気で可愛い笑顔に、絢子のハートは既に奪われてしまった。


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