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夏が来たら
第2章 来訪者
「GPSも使えなくて、どうなるかと思いました。本当に助かりました」
青年は絢子に何度も礼を言った。
「僕、横井さんの息子の友達の黒川秋生と申します。横井君夫婦と別荘に行くはずだったんですが、彼、急に仕事が入って。だから先に別荘に行ってゆっくりしておいでと彼に鍵を渡されたんです。決して不審な者じゃありませんから」
秋生は絢子の不安を察したように、いたずらっぽく笑った。
「そうだったんですか。この辺りは標高が少し高いので、携帯のGPSもきかないんですよね」
「はい、本当に助かりました。ところで、お嬢さん、お名前は?」
「向井絢子です」
「ムカイアヤコさん?アヤコはどういう漢字を書くんですか?」
「豪華絢爛の「ケン」です。名前負けしてますけど」
「そんなことないですよ、ぴったりだと思います。絢子さん」
「それじゃあ、アキオさんはどんな字ですか」
「秋に生まれると書きます。秋生まれなので」
そういえば、明るい表情の中にどことなく秋の憂愁が含まれているような気がする。
絢子はそんな風に思った。
青年は絢子に何度も礼を言った。
「僕、横井さんの息子の友達の黒川秋生と申します。横井君夫婦と別荘に行くはずだったんですが、彼、急に仕事が入って。だから先に別荘に行ってゆっくりしておいでと彼に鍵を渡されたんです。決して不審な者じゃありませんから」
秋生は絢子の不安を察したように、いたずらっぽく笑った。
「そうだったんですか。この辺りは標高が少し高いので、携帯のGPSもきかないんですよね」
「はい、本当に助かりました。ところで、お嬢さん、お名前は?」
「向井絢子です」
「ムカイアヤコさん?アヤコはどういう漢字を書くんですか?」
「豪華絢爛の「ケン」です。名前負けしてますけど」
「そんなことないですよ、ぴったりだと思います。絢子さん」
「それじゃあ、アキオさんはどんな字ですか」
「秋に生まれると書きます。秋生まれなので」
そういえば、明るい表情の中にどことなく秋の憂愁が含まれているような気がする。
絢子はそんな風に思った。