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狂い咲く花
第12章 二、紫陽花 - 辛抱強い愛情
―――おぎゃーおぎゃー

蘭子の元気な泣き声が家の中に響き渡る。
それと同時に麻耶の声も一緒に響きだす。

「もう嫌だ…姉様?姉様――――!!」

離れにいた美弥は、その声を聞いて慌てて麻耶の部屋に急いだ。
麻耶が出産のために里帰りした時から、美弥は離れで過ごすことになった。
初めは麻耶と葉月が離れに住まう予定だったが、麻耶が昔から馴染んでいる自分の部屋がいいと駄々をこねて、美弥が引き渡すことになった。
そして出産が終わったあともこうして住み着いていた。

「どうしたの?麻耶」

「また泣くの。ダメって言っても泣くの!姉様どうしたらいい?」

泣き叫んでいる蘭子を抱きもしないで美弥に泣きつく。

「抱けばいいじゃないの…蘭子、どうしたの~」

慣れた手つきで抱きあげてあやせば、先ほどまで泣いていた蘭子の声が小さくなっていく。
抱かれて安心したのか笑顔が見え隠れする。

「やっぱり、姉様はすごいわ。姉様が育てたらいいのよね」

悪気もなくニコニコと笑う麻耶。
その言葉がどれほど美弥を傷つけているのか知らない。
蘭子が生まれて一年たっても麻耶は自分の住まいに戻ろうとはしなかった。
それどころか、泣いている蘭子に手を焼いて、何かあるたびに美弥を呼んでは押し付けていた。
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