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第12章 二、紫陽花　-　辛抱強い愛情

「麻耶…蘭子はあなたの子供なのよ？あなたが面倒見なくてどうするの？」

「だって…蘭子も姉様に抱っこされた方が喜ぶもの…あっ、葉月が帰ってきた」

遠くから父様と帰ってくる葉月を見て麻耶は家を飛び出していった。
そして葉月に抱き付いて恋人のように寄り添って家に近づいてくる。

「…姉さん、いつも申し訳ない。」

蘭子を抱いている美弥を見て、いつものように謝る葉月。
葉月もまた、帰らないと駄々をこねる麻耶とともに、住み着いていた。

「いいのよ…蘭子は私の姪でもあるのだから気にしないで」

「蘭子は私より姉様が好きなのよ。姉様も蘭子が好きだから問題ないの」

その自分勝手な理屈に誰もがため息をつく。
そして誰も逆らえない。

「姉さん。ありがとう…おいで蘭子」

葉月は麻耶の言い分を無視して、蘭子を抱き上げる。
泣きやんで、ご機嫌な蘭子は葉月の顔をペタペタと触って父親の帰りを歓迎した。

「麻耶も、もう少し母親らしくなれればいいんだがな…」

「父様？私は大丈夫よ。麻耶も言っていたように蘭子がかわいくてしょうがないもの。葉月も帰ってきたことだし、私は母様の手伝いをしてくるわね。食事の用意が終わったら呼ぶわ。」

そう言って、美弥は父様と部屋を後にした。