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狂い咲く花
第4章 一、雛菊 - 希望
陽が落ちようとし始めた頃、何とかすべての帳簿の整理が終わった。
一週間弾き続けて指はパキパキとなるぐらい関節が疲労していることに気が付く。
葉月の力になりたくて、豊田家の人たちに認められたくて必死に頑張った一週間だった。
元々働き者で通っている美弥が嫌われてるわけでもなく、どちらかと言えば気にいられていた。
それでも一週間も泊り込みなのだから粗相はできないと気を張ってる部分もあったのが正直なところ。

「美弥ちゃん。本当にありがとう。美弥ちゃんがいなかったら、倍はかかってたと思うわ」

葉月の母親が手をとってねぎらってくれる。

「いえ。お役に立てたのならうれしいです。これで春日兄が無事に家督を継ぎ結婚が終わればお手伝いした甲斐があります。」

「もう。美弥ちゃんがうちに嫁に来てくれたらおばさんうれしいのに」

「母さん…それを北都姉さんの前で言わないでくれよ。」

葉月が呆れた顔でなだめる。

「分かってますよ。言われなくても北都さんの前では言いません。それより、葉月。美弥ちゃんが家に帰り着く頃には暗くなるから送って行ってあげなさないよ。向こうのご両親にもお礼言ってね。改めてご挨拶に伺いますからって」

「分かってるよ。美弥、少し待っててくれるか?裏を軽く片付けてくるから」

そう言って、葉月と母親は蔵の方に向かった。
それとは入れ違いに春日の許婚の北都が近づいてくる。
春日より2歳年下で、葉月とは同じ年。
ご両親は女学校の経営をしているとか。
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