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狂い咲く花
第24章 二、花浜匙 - 変わらぬ心
───…
「美弥~。僕だけど…蘭子迎えに来たよ」
ドアを開けずに声を掛けた。
あれから少し時間が過ぎていたが、中の様子が分からない南和は気を使った。
少し待たされるかと思ったが、意外と早くドアが開かれた。
幸せそうな美弥の顔を見ると無性に腹が立ってくる。
美弥も被害者だと分かっていても、その幸せそうな表情が許せなかった。
「麻耶はどうしたの?」
「具合が悪そうだったから代わりに迎えにきた…連れて帰るよ」
美弥の返事も待たずに部屋の中に上がり、幸信に軽く会釈だけすると蘭子を抱いて外に出ようとした。
「南和…どうかした?」
あまりしゃべらない南和を見て不思議に思った美弥が声をかける。
「別に…」
「別にって…そんな顔してないよ」
手を伸ばして南和の頬に触れようとする手を払い除ける。
意外と痛かったのか、それとも当然のことにびっくりしたのか美弥の表情が曇った。
「何があったか知りませんが…女性に対する態度ですか?」
幸信は、叩かれた美弥の手を撫でながら静かに抗議する。
その仲よさそうな姿が南和の心を逆なでする。
麻耶が幸せになれないのに、この二人が幸せになるのが許せなかった。
怒りの矛先が変わり始めていた。
「美弥…ごめんね…さっき嫌な事があって…美弥に当たっちゃった…」
いつもの南和に戻って謝れば、美弥は首を横に振って許してくれる。