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狂い咲く花
第25章 二、葡萄 - 宵と狂気
「狂ってる…もういい…何を言ってもお前には伝わらない…このことは報告させてもらう…今後一切この家には近づくな」

葉月の言葉に幸信はため息を付き、徐々にいつもの幸信に戻っていく。

「伝わらないのは君の方だ…君は美弥の義理の弟でしかない。君は麻耶ちゃんの夫で美弥の夫ではない…それを忘れれば取り返しの付かないことになる」

「意味がわかんねぇ…」

幸信は南和の事を思い出して警告する。

「愛は闇を生み、闇は憎しみを生む…人の心を軽んじれば相手は鬼と化す…もうすでに鬼になりかけた人がいることに気が付いて…美弥」

いつの間にか、いつもの穏やかな幸信に戻り不思議な言葉を伝える。
脱ぎ散らかした着物を取り、着付けなおして何も言わずに部屋を出て行こうとする。
ガラス窓を閉めようとしたときに、優しい声で美弥に伝える。

「鬼に捕まらないように…」

窓を閉めて遠のく足音を聞いて、ふたりは深い息を吐く。

「もう大丈夫だから…あいつは出て行ったよ」

美弥に優しくささやきながら、幸信の言った言葉を思いだす。
幸信の言った事は、強(あなが)ち間違っていないと思い、葉月の心に深く刻まれる。
麻耶との事をどうにかしない限り、美弥を傷つけると分かっていた。
それでも蘭子のことを思うと何も言えなくなり中途半端になっていた。
そんな事に悩み、幸信から出された大切な情報を聞き逃していた。
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