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狂い咲く花
第25章 二、葡萄 - 宵と狂気
「何やってんだ――――!!」

その言葉と共に幸信の身体は壁際まで吹き飛んだ。
壁に背中を強く打ち付けて、幸信の体はくの字に曲がって痛み出す。

「大丈夫か?美弥」

美弥を抱き起こしたのは葉月だった。
自分の着物を美弥にかけ、後ろ手に縛られている紐を解いた。

「はっ…葉月…」

恐怖に震える美弥を力強く抱きしめて背中を擦った。

「もう大丈夫だ…俺が来たからもう大丈夫…」

何度も大丈夫だと告げて落ち着かせる。
美弥は葉月の腕の中で震えながらも小さく頷いた。

「なぜ…私たちの愛を邪魔をする…」

幸信が身体を起こしながら、苦しげに声を上げる。
その声に美弥の震えが大きくなる。

「愛だと?嫌がっている女性を縛って無理やり…そこに愛があるのか」

腕の中で震える美弥を気遣い、怒鳴りたい気持ちを抑えて静かに、しかし怒りを込めて話す。

「愛しているからこそ、全てを欲しいと思う。それが本当の愛というものだ…心から愛した女性と共にいない君には分かるまい。」

「ふざけるなっ!!全てが欲しいからといって傷つけてもいいのか…今の美弥をみても何も思わないのか…なぜひどいことをする」

抱きしめる腕に力を込めて全てから守ろうとする。

「君に言える資格があるの?君が美弥を愛すれば愛するほど、美弥を傷つけるとなぜ分からない…私と一緒にいたほうが美弥は幸せになれるというのに…」

幸信は手を美弥に差し出した。

「さぁ美弥。私の元においで。私の腕の中のほうがあなたは幸せになれる」

差し出された手を葉月が払いのける。
何を言っても無駄なのだと幸信との会話で思い知る。
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