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狂い咲く花
第30章 三、莢蒾 - 無視したら私は死にます
美弥は彼と目的地へ歩いて向かった。
少し戻り、途中から道を逸れ森を抜けた辺りに目的地はあった。
途中、何カ所か分岐があり、そこで迷う人が多かったため、道案内をかってでたのもある。
簡単に自己紹介をして男性が泰邦(やすくに)という名前だと分かった。
話をしながら、男性の歩調に合わせて進む。

「私の速度に合わせてもらって申し訳ないね」

美弥の心遣いに気が付いた泰邦が感謝を述べた。

「大丈夫ですよ。蘭子と一緒の時はこの倍はゆっくりですから」

「さっきのお嬢さん?」

「ええ。姪っ子なんです。先ほど会った近くに住んでいるので良く遊びにくるんです。」

蘭子の事を話ながら、どんどんと薄暗い木々の中を歩いて行く。
元々、木々に覆われて陽の光が入らない場所ではあったが、日が落ちかけている今はもっと薄暗かった。
帰りは家の方にお願いして火を借りようと美弥は考えていた。
30分も歩けば目的地の金沢宅が見えてくる。
人付き合いが良くないご高齢の男性が一人住んでいたと美弥は認識していた。
見かけるのも年に数回のみ。
ここ一年は見かけていないことに今になって気が付いた。

「金沢さんは身体でも壊してらっしゃるんですか?」

泰邦は渋い顔をして言葉を濁らせる。

「…私も詳しくはしらないんですが…主人に届け物を言いつりましてね。渡すだけですから帰りも一緒に帰りましょうか。暗くなっての夜道は危険ですから。」

泰邦のにこやかな笑顔にまったく警戒心がない美弥だった。
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