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狂い咲く花
第30章 三、莢蒾 - 無視したら私は死にます
「ありがとうございます。」

美弥がお礼を言ったところでちょうど目的地に到着する。
家の中からは弱い光が漏れでていた。
泰邦が何度か扉を叩くが人が出てくる気配はなく、手を掛けると鍵がかかっていないのか開いた。

「直ぐ済むから待っててください。」

泰邦は美弥に告げると中に入って行った。
中からは人の話し声が聞こえてくる。
美弥は2人の会話が終わるのをただ待つことにした。
空を見上げても覆い茂った木々で何も見えなかった。
太陽が完全に沈み切った暗闇を想像すると身震いがした。
それと同時に早く帰りたいと願う。

「お待たせしました…この家の主人があなたにお礼がしたいらしいですが、会ってもらえますか?」

扉から現れた泰邦は美弥に告げる。
お礼も何もと断っても

「ぜひ、お願いします。彼の機嫌を損ねると私が怒られますから」

とまで言われれば、美弥が顔を出さないわけにはいかなかった。
歩き出すと泰邦が扉の外に出て美弥を部屋の中に促す。
敷居まで行き、一瞬ためらい振り返った。
振り返った瞬間、背中を強く押されて転がるように中に入った。
何が何だか分からず顔を上げて泰邦を見上げた。
そこには泰邦ともう一人、違う男性が上から見下ろしていた。
この家には老人男性が一人だったはずだと頭をよぎる。
しかし、見下ろす2人の男性は同じぐらいの年齢のように見えた。
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