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狂い咲く花
第31章 三、丹一華 - 嫉妬の為の無実の犠牲
その足が向かったのは葉月の家だった。
無理やりにせよ、他の男と交わった自分が葉月に会えるわけがないと思いながらも、一目だけでも会いたいと少しの心の拠り所を求めて美弥は走った。
近くまで行くと、そこから先に行くことができなかった。
会いたくても穢れてしまった自分を見て欲しくないと矛盾した思いが充満する。

「葉月…ごめんなさい…」

拭き取られることのない涙は地面へと落ちていく。
何度も何度も葉月に謝りその場を離れようとした。

『じゃあ、行ってくるよ』

家の扉が開き葉月の姿が現れた。
今にも走りだして抱き付きたいのを抑えて、愛しい葉月の顔だけを見続けた。

「葉月…私はここよ…。…助けて…」

その言葉が届くはずもなく消えていく。

『どのくらいに帰ってくる?』

ふたりの会話が聞こえてくる。

『晩御飯までには帰ってくるよ。』

『本当?』

『ああ。だからそれまで、一人で待ってられる?』

『大丈夫…帰ってきたらまた抱きしめてくれる?』

『いいよ。抱きしめてあげるから…待てて』

麻耶が手を伸ばして葉月の首に回ると、2人の顔は近づき口づけをした。
角度を変えながら何度も何度も口づけを…
それを美弥は見ていることしかできなかった。

「嘘つき…」

美弥は踵を返して逃げるように自分の家に走った。
夜の出来事、そして先ほどの2人の口づけを見せつけられ、美弥の心に闇を落としていった。
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