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狂い咲く花
第34章 三、エリカ - 孤独
無我夢中で走り続けて、気が付けば知らない場所まで走っていた。
帰ろうにも帰る道すら分からない。
このまま、凍え死んでもそれはそれでいいのかもしれないと、行く先もなく美弥は彷徨い歩いた。

─…

──…

───…

「犯されたいのか」

後ろから手を掴まれ、低い声が美弥の耳に届く。
その声に振り向けば、そこには宝賀がいた。
美弥は心細さからなのか、不覚にも宝賀の前で涙を流した。

「何があった?」

泣き出した美弥を宝賀は手を引き、顔を胸に押しつけて涙が止まるまで抱きしめていた。
涙が止まり、落ち着き始めたころ宝賀は優しい声で囁く。

「忘れさせてやろうか?」

じっと見つめてくる宝賀の目に吸い込まれそうになる。
このまま、この手を取ったらどんなに楽になるだろうかと、縋れる手があれば縋りたかった。
もう、この手に何も残っていないと思っている美弥は宝賀の申し出に頷いた。
宝賀に手を引かれるがまま歩いて行く。
林を抜けて誰も来ないであろう場所に小屋が現れた。
初めて宝賀と会った時の事を思い出す。
無理やりに犯され、屈辱的なことを強いられ憎むことさえあったが、今となればこんな自分の傍にいてくれることさえ感謝したくなる。
宝賀は先に中に入り、蝋燭に火を灯した。
布団が壁際にたたまれ、何もない部屋だった。
囲炉裏に火を入れ部屋を暖め始める。
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