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狂い咲く花
第35章 三、桔梗 - 深い愛
「いたか?」

「いいえ…どこを探せば良いのか!!」

「落ち着け!とりあえず、家に戻ろう…」

「だけど、父さん…」

「家に戻っているかも知れんだろう…帰ってから今後のことを話そう。」

父様に説得され、仕方なく家に帰ることにした。
美弥が葉月を突き飛ばし出て行ってから、半日が過ぎようとしていた。
直ぐに後を追いかければよかったと葉月は後悔した。
自分を突き飛ばし駆け出した美弥をただ呆然とし、動くことができなかった。
父様は美弥が離れに戻ったと思い、葉月を部屋に上げるために外に出たときに美弥が外に駆け出して行ったと知った。
母様を家に残し、二人は街中を探し回った。
近所の家を回り、あらゆるところを探しても美弥が見つかることはなかった
探している間でも美弥の言葉が葉月の脳裏に浮かぶ。

『出会わなければよかった』

『好きにならなければよかった』

『私を選んでくれなかったの?』

『大嫌い』

それを口にするときの美弥の表情を思い出すと胸が締め付けられた。
自分はなにをやっているのだろうかと。
愛するといいながら、愛する人を一番に傷つけているではないかと。
出会わなければ、好きにならなければ、本当に美弥は苦しまずにすんだのだろうかと…
麻耶を見捨てて美弥を選んだとして、幸せになれたのだろうかと…
考えても答えは否。
好きにならないわけがない。
全てを捨てて美弥を選んでも、美弥はそれを決して望まない…
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