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狂い咲く花
第6章 一、紫丁香花 - 恋の芽生え
───…
夜中に厠に目を覚ました麻耶は、隣で寝ている美弥を起こそうと近づいた。
しかし、そこにいるはずの美弥の姿が見当たらない。
美弥の帰りを少し待ってみても一向に帰ってくる気配がなかった。
一人では怖いと思いながら、仕方なく暗い廊下を目に涙をためながら歩いて行く。
静まり返った家の中は、自分の歩く音だけが響いて怖さを増していった。
恐怖も限界に達しようとしてる時、離れの窓から光が漏れていることに気が付き、昨日は葉月が父様と飲んで離れに泊ったんだと思いつく。
姉様もいるかもしれないと思った麻耶はそっと家を抜け出して離れに向かった。
『…美弥…』
近づいていくと葉月が美弥を呼ぶ声が聞こえ、やっぱりいたんだと扉に手をかけて姉様の名前を呼ぼうとした。
「姉…」
口に出そうとした言葉を飲み込んだ。
葉月に抱きつき苦しそうにしている美弥の表情を見て、身体が凍りついた。
苦しそうで、だけどどこかうれしそうな表情に目を背けることもできず、ただ2人の情事を意味も知らずに見続けた。