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狂い咲く花
第6章 一、紫丁香花 - 恋の芽生え
───…
壁にぶつかりながら歩く足音で目が覚めた。
小さな音ながら、静まり返ったこの時刻では響いてしまう。
そっと襖を開けて覗いてみれば、壁に寄りかかりながら歩く葉月の姿があった。
父様に相当飲まされているのが分かるほど、足元がおぼつかない。
酒豪の父様に、こんな時間までつきあわされる葉月を哀れに思った。
お酒が弱い南和は父様を葉月に押し付けて早々に退散していた。
「葉月、大丈夫?」
近づいて声をかけてみた。
「ああ、美弥か…起こして悪いね…」
その言葉にいつもよりは少しはましだと分かる。
いつもだったら、呂律も回らないし美弥と麻耶の判別もつかない。
「肩に手を回して…部屋まで一緒に行くから」
葉月の腕を取って自分の肩に回した。
体重をかけられ、よろめきそうになるのを堪えて前に進んだ。
「美弥…ごめん…」
「いいのよ。父様が飲ませたんだから…南和は早々に退散でしょ?」
「いつものことだけどね」
2人して笑って、葉月を部屋まで案内する。
先に母様が来たのか、部屋には布団が一組敷かれていた。
「お水持ってきておくわね」
布団の上に座らせて立ち上がろうとすると、手を引きかれ抱きしめられた。
美弥も迷わず葉月の背中に腕を回しお互いの温もりを感じ、力がこもる腕が心地よかった。
「美弥。一日も早く一緒になりたい」
「私もよ。あと少しの辛抱だわ。待ち遠しい」