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狂い咲く花
第36章 三、吾亦紅 – 変化
「いやぁ───!!……やめて…アアアアッ……」

いつも以上に大きく身体が跳ね、そのまま布団に沈み込んだ。
何の反応もしなくなった美弥に漸く責めの手を緩め、肩で大きな息をしながらゴロリとその場で横になった。
天井を見ながら目を閉じて眠りにつこうとした。



―――トントン



扉が叩かれる音がして宝賀は身構える。
こんな山中に人が来ることはめったにない。
ただの迷い人ならばいいがと、近くにある棒を片手に扉の方に近づき、扉に背中を付けて低い声で威嚇する。

「誰だ!!」

「僕だよ…ちょと話があるんだけどいいかな?」

その声に、宝賀は胸を撫でおろした。
敵ではないと分かった宝賀は、斜めに立てかけているつっかえ棒を外して扉を開けた。

「宝賀…あれはやりすぎでしょう…声が外に筒抜け…ってこの匂い」

笑いながら入ろうとした男性は片手で鼻と口をふさいだ。
部屋の中に充満しているものが何なのか男性には直ぐに分かった。

「美弥を抱くには良い代物だろう?媚薬香は」

戸口に背中を預けて中の美弥の状態を顎で示した。
そこには無情にも裸で横たわる美弥の姿があった。
その姿を遠目からみながら男性は顔を強張らせる。

「媚薬香だけじゃないよね…違うクスリ…混ぜてるよね」

男性の一言に宝賀はニヤリと笑った。
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