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狂い咲く花
第36章 三、吾亦紅 – 変化
──…
玄関の扉を開いて声をかけるが誰も出てくる気配はなかった。
室内はシーンと静まり返り誰もいないかのようだった。
「あがるよ?」
一言声をかけて廊下を歩いて行く。
部屋を確かめながら進むと、台所には座り込んでいる母様がいた。
何をするでもなくただ項垂れるように座っていた。
「おばさん…」
近づいて声をかけると、母様はやっと顔を上げた。
「あら…南和ちゃん…」
覇気のない母様を見て南和は心が痛む。
その憔悴しきっている顔を見ると、さすがの南和も罪悪感が生まれてくる。
「大丈夫?」
掛ける言葉などこれくらしかない。
母様は南和の言葉に力なく笑う。
「大丈夫よ…良い処に来てくれたわ。南和ちゃんにお願いがあるの」
そういいながら母様は立ち上がった。
「お願い?」
「こんなこと南和ちゃんにしか頼めないから…。麻耶をね…少し連れ出してほしいの」
「麻耶がどうかしたの?」
麻耶の名前を出されて動揺した。
美弥がいなくなった状況で頻繁に会うのは危険だと距離を取っていた。
「美弥がいなくなってから、麻耶も落ち込んであまり喋らないの…南和ちゃんなら麻耶の気持ち楽にしてくれるかもしれないと思って…お願いできる?」
麻耶の部屋に続く廊下を歩きながら最近の麻耶の様子を話す。
美弥がいなくなり何もかもが変わった相良家に南和は驚いていた。
その中でも、麻耶が一番変わったということに一番驚く。