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狂い咲く花
第36章 三、吾亦紅 – 変化
息も整わないうちに宝賀は唇を重ね合わせる。
舌を入れ込めば自然と美弥は絡める。
最後の口づけだと思うと止まらない。
美弥にとって、そこに愛情があるわけでもない。
寂しくてどうしようもない時に傍にいてくれた宝賀へ、ささやかなお礼に似た気持ちだったのかもしれない。

「美弥、手を」

美弥は言われたとおりに手を出した。
宝賀は両手を取り、縄で縛りあげていく。

「盗賊に監禁されていたように見えるだろう?普通の生活に戻るんだ。自分で留まったより言い訳ができる。」

美弥の中から自分自身を抜き、簡単に後処理をして、着物を上から被せる。

「苦しくなったら、心を殺せ。何も考えられ無くなればそこは安住の地となる。」

それだけ口にすると、自分の着物を羽織り扉の方に歩いて行く。
その後ろ姿を見ながら美弥は感謝の言葉を述べる。

「ありがとう…」

驚いた宝賀は振り向き美弥を見つめた。

「もし…あの時、あなたに会っていなかったら、きっと私はこの世にいなかった…。憎いと思いながら感謝もしてるの…ありがとう」

宝賀は美弥の事を強い女だと思った。
そして、その強さがきれいだとも…

「死んだ方が楽だったかもしれないぞ…じゃあな」

抱きしめたい気持ちを抑えて宝賀は出ていった。
残された美弥は、葉月や美弥の仲睦まじい姿を目の当たりにしなければならないかと思うと、本当に死んだ方がましだったのかもしれないと思いながら目を閉じて眠りに落ちていく。
次に目が覚めた時は、そこには宝賀の姿はなく、その代わり…
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