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狂い咲く花
第37章 三、ハハミズキ - 私の想いを受けて下さい。
しかし、持ち上がったのは二つの腕。
引き寄せて見てみれば、両手は縄で結ばれていた。
葉月はその惨事を見て涙が零れてくる。
どれだけひどい目にあわされたのかと思うと心が張り裂けそうだった。
結びを解き、着物を着せた。
身動き一つしない美弥の姿にも不安が広がる。

「もう、大丈夫ですか?」

鉄斎が葉月に声をかけた。
葉月は何も言わず頷き、美弥を横抱きにして立ち上がった。
その軽さに葉月は驚いた。
とりあえず、外に出て新鮮な空気を吸う。
もう一度地面に美弥を下ろし、寒くないように薄手の布団で包んだ。

「美弥…俺が分かる?」

美弥は葉月の肩に顔を預けて返事すらしない。
葉月と認識しているかさえ疑問だった。

「美弥…俺だ…美弥?」

父様が美弥の両頬に手を添えて目を覗き込む。
しかし、2人の視線が交わることなどなかった。
南和は何も言わず、動かずに静観していた。
そんな4人の様子を見ながら鉄斎は他の僧侶に指示を出していた。

「蓬黎(ほうれい)は寺に戻ってこのことを和尚に。そして風呂を沸かしてくれ。蘇楽は相良家に行って美弥さんの無事と衣類を借りてきてくれ。妙仁は私と一緒に4人を護衛しながら寺に戻る。」

「だったら僕も麻耶の家に一緒に行くよ。おばさんはきっと美弥に会いたがるだろうから。その間、麻耶と蘭子を見てるよ」

南和はそう言って、蘇楽と一緒に相良家に向かった。
鉄斎はまだ混乱が続く父様と葉月を説得し、その場を離れた。
盗賊がいつ戻ってくるか分らない場所に居続ける理由などない。
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