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第38章 三、緋衣草　-　家族愛

どうして？
嘘でも美弥の方が大切って言ってくれないの？
それだけでいいのに。
それだけで私の心は救われたのに…
嘘でも美弥の方が大切だって言ってほしかったんだよ？

母の顔が見る見るうちに変わっていく。
今にも泣きそうな顔だった。

ごめんなさい…

私は謝るしかない。

母様を泣かせる悪い子…だね…

父様の手に力がこもった。
私は父様の顔を見上げた。
すごく優しい目だった。

『美弥は悪い子じゃないよ。』

悪い子じゃない？

『そうだとも。子供が親に愛情を求めるのは当然のことだ。ただ美弥と麻耶は双子だから同じだけの愛情じゃないと不安になる。…違な。相手より多くの愛情が欲しくなるんだろうな。だから相手より少しでも愛されたいと思う。』

うん…
麻耶より愛されたい…
いつも美弥は後回しだから…
美弥はいらない子？

私はいつの間にか小さな私になっていた。
父様の膝の上に乗っている私の横には母様が心配そうな顔で寄り添っている。

『いらない子なんて言わないで。美弥がいなかったら母様は…生きて行けない…』