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狂い咲く花
第47章 四、アリウム – 深い悲しみ
「じゃあ、今日も頼むね」
 
「うん。富子ちゃん。しっかり勉強しておいで」
 
フミをあやしながら美弥は富子に声をかけると、富子はうれしそうに頷き葉月と共に学びやに戻って行った。
残された美弥は境内を歩きながら富子が戻るのを待つ。
 
いつの間にか風が心地よい季節に移り変わっていた。
美弥は葉月の仕事を手伝い、子供たちは美弥に懐き、その偽りのない心に心豊かな時間を過ごせるようになっていた。
悲劇などなにもなかったかのように時は静かに緩やかに流れていた。
 
フミの重さは蘭子の事を思いださせる。
いつも麻耶の代わりに抱いていたあの頃を、懐かしくも幸せだったと遠い日を懐かしむ。
そんな蘭子も今年で5歳になり、すっかりお姉さんの顔になっていた。
時々、麻耶が蘭子の手を引いて寺にやってくることがあるが、蘭子だけを美弥に預けて麻耶は会わずに帰って行く。
あの日以来、ふたりは会話をすることはない。
麻耶が美弥を見つめる時があっても、美弥が麻耶を見つめる時はない。
美弥の目に触れないようにと麻耶は姿を現すことはなかった。
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