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第47章 四、アリウム　–　深い悲しみ

「食事にしましょう。みんなが麻耶が来るのを待ってるわよ」

母様が手を差し伸べるとその手を取り一緒に立ち上がった。
その反動を使い、母様は麻耶を一瞬だけ抱きしめた。
その一瞬に色々な思いを込めて。
その思いは麻耶に伝わり、押し留めていたものが溢れかえりそうになる。
母様の胸に顔を埋めて声を大にして泣きたい衝動にかられるが、それを我慢して母様の手を離した。
それを感じ取った母様もまた寂しい思いをする。
ふたりは何も話すことはせず父様がいる居間に足を進めた。

「麻耶が遅いから蘭子が先に食べ始めたぞ」

父様が呆れながら蘭子を見て麻耶に告げた。
蘭子はフフフッと笑いながらご飯を口の中いっぱいに頬張っていた。

「蘭子ったら…みんなでいただきますをしてからでしょう？それにご飯こぼさないで」

膝の上に落としているご飯粒を拾い集めながら、蘭子が手に持っているお椀を取ろうとすると、パシッと麻耶の手を叩いた。
驚いた麻耶は咄嗟に手を引っ込め蘭子を見れば、まだ怒っているのか麻耶を睨んでいた。

「ひらい。さはらなひで」

詰め込まれた口から出た言葉は意味をなしていない。
しかし、その眼差しから何を言いたいのか麻耶は理解していた。