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狂い咲く花
第47章 四、アリウム – 深い悲しみ
蘭子に嫌いと言われるたびに何度消えてしまいたいと思った事か分からない。
それでも生きていくことを選んだのは、ただ美弥への罪への意識だけだった。
罪から逃れたら、二度と美弥とふれあうことができない気がして全てを受け入れる覚悟を決めていた。
それでも独りで生きていくには麻耶の心はまだ幼すぎ、何度となく涙を流し泣くことで心を保っていた。

「麻耶…入るわよ」

廊下から母様が声をかけ襖を開けた。
麻耶は急いで涙を拭き笑顔を向けても、泣いていたのは明白だった。
それでも母様は気がつかないふりをして麻耶に近づく。

「蘭子と何かあったの?」

「なんでもないよ…今日ね、葉月の母様が来てね。蘭子と一緒に姉様の所に行ってもらったの。蘭子はとても楽しかったって。鉄斎さんに抱っこされたって喜んでた」

泣いていたことを悟られまいとする姿が健気で母様は抱きしめたくなる。
しかし、それをしないのは麻耶の心を良く分かっていたからだった。
手を差し伸べるのは簡単な事、しかし強くなろうとしている麻耶の想いを踏みにじらないために母様も耐えていた。

「蘭子は鉄斎さんが好きだものね…父様には内緒よ。知ったら怒ってしまうから」

「そうね。葉月も良い顔しないみたい…父親って大変ね」

クスクスと笑う麻耶を見て、少しホッとした様子で母様は見つめていた。
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