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狂い咲く花
第2章 一、木香薔薇 - 幼い頃の幸せな時間
麻耶は不思議そうに美弥を見る。
だけど、その言葉の意味を知らなかった。
父様の商売が軌道に乗りお金がたくさん入るようになった頃、優しかった叔父に裏切られて全ての財産を失った。
その過去を麻耶は知らない。
だけど、美弥は幼いながらに覚えていた。
いつも膝の上に乗せてくれていた優しい叔父。
その叔父が、ある日を境に美弥や麻耶に目を向けなくなった。
どんなに微笑み話しかけても、同じものが返ってくることなかった。
後に知ることになるが、お金に目がくらんだ叔父が父様から全てを奪い取ってしまったのだと聞かされた。
お金は魔物。
人の心を変えてしまう魔物だと、小さいながらに思い知った。
それが大人になっても変わることがなく、お金はほどほどに困らない程度でいいと質素な暮らしを望むようになった。

「麻耶は知らなくていいことよ。麻耶と父様と母様と4人が幸せならそれでいいから」

にっこり笑う美弥に麻耶は近づき、一瞬抱き付いて美弥の膝の上に座ると、体重を美弥にかけて足を投げ出しバタバタと楽しそうに遊ぶ。

「ふふふっ。みんな幸せ。」

いつも楽しそうに笑う麻耶。
知らないで済むなら嫌なことは知らないでいい。
2人で笑って楽しく毎日を過ごせたらそれでいいと美弥は願う。
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