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狂い咲く花
第50章 四、杜若 - 幸せは必ず来る
冬から春へ、春から夏へと季節は移り変わる。
時は誰の元にも平等に訪れ四季折々の恵みを与え、人々の心の傷を癒していく。
美弥と麻耶も心穏やかな時を過ごせるようになっていた。
障子を開け放たれた部屋は秋風が通り抜け、心地よい風を運んでくる。
その風を身体で感じながら、今日も姉妹は仲良く過ごしていた。
その傍らで幼き少女は折り紙を折り、その姿を微笑ましく見つめている。

「姉様…蘭子、上手になったでしょう?」

「幼かった頃の麻耶より上手ね」

ふたりから褒められて蘭子は得意げに笑った。

「姉様、それ酷いよ。私はもっと上手だったもん」

自分の娘に負けていると思うと、負けられないと娘と張り合う。
そんな風景を美弥は楽しそうに見ていた。

「ほらっ、蘭子にはこんな物、折れないでしょう?」

「蘭子も…折れるもん」

自慢げに見せる姿が幼かった頃の麻耶と重なる。
何一つ変わらない、二度戻ることが叶わないと一度は諦めていた光景が目の前に広がる。
願っていても、訪れることはない諦めていた。
許したいと思っていても、自分の心が麻耶を許せる日が来るなんて思いもしていなかった。
もちろん、美弥が麻耶を信じることも許すことも安易なことではない。
一度、湧き上がった疑念が完全に払拭されるのはむずかしい。
されど、美弥は戻ることを願った。
双子だから分かり合えるお互いの感情。
双子だから離れられない運命。
麻耶を失うかもしれないと思った時に、心は正直に麻耶を求めてしまった。
それが答えなのだろうと少しずつ歩み寄り今に至っていた。
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