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ただ愛されたかっただけなのに
第36章 どうして今?
「お前といると、彼女のこと忘れられると思った。
 今回も、お前を抱けば全て忘れられるって。
 なんか癒してくれる気がして。」

だから泣きそうだったんだ。
知り合った頃、陰があるように見えたのは、彼女のことが心にあったから。
私は彼女を忘れる為の道具だったんだ。

「で、どうだった?
 抱いてみて」

「セックスしてるときはお前のことだけ考えてた」

「嘘ばっかり。
 泣きそうになってたよ」

彼が黙った。
そこまで好きな気持ちはなんとなくわかる。
私も英くんに対して同じ気持ちだから。
でも、私を利用しないで。
好きだったあの時の気持ちを、汚さないで。

「ごめんな…
 お前を傷つけてることはわかってる。
 だけど、お前しか頼れなかった。」

私は彼を抱きしめた。
泣いていいよって気持ちで。
でも、もうこれで会わないよって。
利用されるのは嫌。
私をちゃんと愛してくれるならいいけど、そうじゃなきゃプライドが許さない。

「お前の体はやっぱりいいな。
 気持ちいい。」

そう言いながら私をぎゅっと抱きしめた。
あんなに苦しかったのに。
あなたがいなくなって、忘れられなくて苦しくて。
それなのにその気持ちを踏みにじらないで…

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