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裸身
第4章 目覚めた女
頭の中が真っ白になった。何も考えられなかった。ただ、躯中に温かさを感じた。


『シャワーを浴びたいんだね?』

優しく抱き寄せた藤堂は、汗ばんでいる躯を竦めた綾の仕種を見て察知したのだろう。

『豊さんは?』

『綾の後でいいよ、もう一度抱き寄せてもいいかな?』


蕩けるような甘い口づけが、綾に眩暈を与えた……

うっとりするほど穏やかな口づけ……

急がず、慌てず、時の流れに逆らうこともない。
二人だけの時間が流れていた……





シャワーを浴びながら、初めてのデートで『抱いてください』と言った自分が、今更ながら恥ずかしく、大人の振る舞いの藤堂の大きさを改めて実感していた。


『お先に使わせていただきました。』

『ジンジャーエール、ここに置くよ。では、私も失礼して。』


ジンジャーの中の気泡を纏ったチェリーが可愛い。

(あなたもなんだか恥ずかしそうね(笑))

チェリーに話かける自分に思わず笑ってしまった。

大きな窓の向こうは、綾の部屋から見る夜景とは全く異なって見えた。
煌めいて、輝いて、華やいで見える。

綾の気持ちが、そう見せていたのに違いなかった。

女のときめきを知った綾は美しかった。



バスローブを羽織った藤堂が、外を眺める綾の後ろから抱きしめる……

振り向くと、穏やかな笑顔の藤堂が居た……

唇を重ねる……
手に持ったグラスが、藤堂の手によってすり抜けていく……

綾は藤堂の背中に両手を絡め、藤堂は綾の腰を抱いた。


胸が高鳴る。壊れそうなくらい早鐘のように胸を叩く。
立っていることが出来なくなり、膝の力が抜けていく………


フッと躯が浮き、藤堂に抱き上げられ、ベッドに静かに寝かされた。


『ありがとう、私と出逢ってくれて。』

『それは、私の台詞だわ…』
幸せの涙が頬を伝った………



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