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裸身
第4章 目覚めた女
『唐突ですね…』

『すみません…』

『私も男ですからね。綾さんのような女性を抱きたいと思いますよ。でもね、綾さん、簡単に躯を預けてしまうのはどうでしょうか……』


藤堂の言うことは尤もで、軽い気持ちで『抱いて』と言ったのではないことも承知の上だった。


顔から火が出そうなくらい恥ずかしく、いたたまれなかった。


『送ります。』

『…はい。』


最寄り駅でと何度も言った。しかし、藤堂は自宅マンションまで送ると、
『連絡しますね、今日はありがとう。』
そう言い残し帰って行った。


とにかく、自分の言動を悔いた。
浮かれていたのだ、きっと。


しかし


一度目を覚ました女の欲求は、封印してきた反動で、どうにかなりそうなくらい高まっていくのだった。




『課長、なんだか凄く綺麗!』

『お世辞はやめてちょうだい。』

『ほんとです!大人の女性の色気みたいな。』



藤堂への思いと後悔、禁欲して躯が疼くような感覚の日々が一ヶ月ほど続いたある日、不意にメール着信のランプが光った。


今夜、時間はありますか?あの店に居ます。


胸が裂けそうだった。
気まずさはある。でも逢いたかった。



『こんばんは。お久しぶりです。先日は-----』

『待ってましたよ(笑)さあ、ここへ。』

カウンターに並んで座る。

会話のないまま、10分、20分と時が流れる。
BGMが静かに奏でられていた。

『場所を変えましょう。マスター、タクシーを一台。』

『かしこまりました。』


パタン…


タクシーは、有名な豪華ホテルに滑り込む。


最上階のロイヤルスイートルームに通された。

夜景がとても煌めいて、まばゆい宝石を散りばめたような輝きを放っている。


『綾、君に惹かれている。綾を抱きしめるのは許されることかい?許されるなら、私は綾をここで抱きしめたいんだ。』


まるで夢のよう……
まるでシンデレラストーリー……


私の46年は、この日のため?

綾の瞳が映す藤堂は涙で揺らぎ、滲んで見えた………


頬を伝う涙を拭い、藤堂が言った。

『待たせたね、綾。』




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