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裸身
第7章 挑発
本当にそんな気は無かった。

梅雨時の鬱陶しい胸苦しい暑さと湿度に負けそうになりながら、今日も通勤ラッシュの電車にもみくちゃになり帰途についた私。


一人暮らしのマンションに明かりが灯る。
エアコンの設定を22度の強風にする。

スーツの上着をハンガーに掛け、シワ取り、除菌のスプレーを吹き掛ける。ほんのりバラの香りが、エアコンの風に乗って部屋に散らばる。
スカートにもスプレーをして、シャワーへと向かった。


ぬるめのシャワーを浴び、躯のべたつきを洗い流す。バスルームにシトラスミントの香りが充満し、心と躯がほんの少しだけ元気になった錯覚を感じる。


ターバンのように、濡れ髪をタオルで巻き、短いバスローブを着てリビングのソファーに脚を投げ出して座った。

『あー、気持ちいい。』

ガラステーブルに ボディミルクと化粧水、フェイスパック、スパークリングワインを用意する。

『そろそろ設定上げなきゃね。』

独り言のように呟きながら、エアコンの温度と風量を設定し直す。


白いレースのカーテンの揺らめきがおとなしくなった。

フェイスパックをしながら、ボディミルクを手足に擦り込む。首筋やデコルテにも擦り込むと、胸を開き、乳房にも刷り込んだ。

片方の膝を立て、スパークリングワインで喉を潤しながら、カーテンの向こうの街明かりに目をやる。


パックを剥がし、バルコニーに出ると、ワインを片手にタバコに火を点けた。


メンソールのタバコを日に数本吸うが、風呂上がりにバルコニーで吸うタバコが好きだ。






そんな悦子を見ている目があったことを悦子自身は知らずにいた。





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