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裸身
第3章 入り込む女
『ハァ。。。』


フォトスタジオの前で、大きなため息を吐いた。


木暮聖園(こぐれみその)31歳、既婚。
夫、木暮将也(こぐれまさや)33歳、大手商社マン。二人は大学で知り合い、5年の交際を経て結婚。今年で結婚6年目。

二人に子供はいない。しかし、夫の強い希望で、専業主婦をしている聖園である。

バリバリのキャリアを目指し、学業に明け暮れていた頃、将也と知り合った………

思えば、それが聖園の道を変えたのかも知れない。


高収入の夫、齷齪(あくせく)働く必要のない私の立場。友人達は、同様に私を玉の輿と言い、羨ましいと言った。


それはちょっと違うな……


聖園は思う。子供が居ないから、時間やお金はそれなりに余裕はある。
でも……
社会から取り残されたような、虚無感が襲う……





何となく、街を歩いた。欲しいものは特にない。それでも街を歩けば、社会と繋がっているような気持ちになれた。


ウィンドウに映る自分が、ただ歳を重ねただけの女に見えて、ため息が洩れる。

ウィンドウには、モデルを思わせる可愛らしい写真や、記念の写真などのサンプルがレイアウトされている。

『みんな、どれもこれも輝いて眩しいくらい。あぁ、私には無い輝きだわ……』


記念写真撮ります、私記念日に輝く自分を。


『冴えないキャッチフレーズね。冴えないあたり、私と同じね。』



商店街に入り、いつものように買い物をして家路についた。


マンションの高層階からの景色が綺麗で、住まいをここに決めた。

今では、ますます社会が遠くに見えて、綺麗な景色を綺麗と思えなくなっている自分がいる、そんな部屋。


お母さんが作ってくれたような、洒落っ気のないおかずを好む将也のために、今夜はふろふき大根を煮ている。ぶりの照り焼き、青菜の白和え、白菜の味噌汁。

初冬の食卓。

将也は、美味しい、と、喜んで食べる。
満足すると、その晩は必ず私を求める。

そんなパターンで6年目を迎えていた……………




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