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裸身
第3章 入り込む女
今日、朝から降り出した雨は止む気配はなく、肌寒さに暖房をいれた。


低く垂れ込めるグレーの雲を眺めながら、ホットココアを啜っていた。


『だめ!やっぱり、外に出なきゃ!』


本当なら、今日は美容院に行く予定だった。しかし降り出した雨に、今日はキャンセルを入れ、何をするともなく部屋から外を眺めていたのだった。


何かに駆り立てられるように街に出た−−−−−


『私記念日…ね…』
フォトスタジオの前で、足が止まって……

『嫌な雨…ですね。』

『えっ?』

『いやあ、普通は雨を嫌がる方が多いから、でも、私は雨が好きでしてね(笑)』

『え…あ、まあ、雨にもよりますが、私も雨は嫌いではない…かな(笑)』

『いや、失礼しました。先日もここで、しばらく足を止めていらしたお方だと思いましたので、つい、お声をかけてしまいました。』

『まあ、見られてたんですね。恥ずかしいわ…』

『よければ、中に入りませんか?コーヒーでもどうです?』

『あ、ありがとうございます。』

『寒くなりましたね。』

コポコポと沸かすコーヒーの音と香りが辺りを温かくしてくれる。
心まで癒されるような香りだ。

『察するに、奥様ですかね?』

『はい。専業主婦の退屈な毎日です…』


この初老の男性は、ここの主なのだろう。物腰のやわらかい、ホッとさせてくれる感じの方だ。


『何やらお悩みでもお有りですかね、いや、話さなくて結構。余計なお世話というもんでしたな(笑)』


何故、話してしまったのだろう……
今知り合ったばかりの人なのに……


『そうですか…デート、外食、映画、ショッピング、旅行、全て無くなった、ですか。でも、互いの愛情は変わらないと…』

『我が儘ですね、私。お友達と、全てしているのに、夫じゃないことに不満げで……』

『いいんじゃないですかね?我が儘でも。その……夜、は……』

『あ…ま、まあ、普通かと……』

『ふふぅん、満足されてませんね。』


見破られた!!

確かに……でも、仕方がないと思っていた。





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