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暁の星と月
第10章 聖夜の恋人
暁はクリスマスツリーの飾り付けを全て終えると、温室へ足を運び、真紅のイングリッシュローズを花鋏で摘んだ。
真冬でも華やかに咲き誇る紅い薔薇…。
光さんに相応しい花だ…。

そしてそのまま地下のワインセラーに行き、ルイ・ロデレールのシャンパンを選ぶ。

兄、礼也の部屋に赴くと、次の間のテーブルに氷を満たしたワインクーラーに入れたシャンパンを置き、真紅の薔薇を添える。
…兄さん…喜んでくれるといいな…。

生田には仕事をするから部屋に引きこもると告げ、自室に引き上げた。

…程なくして、玄関の車寄せに礼也の愛車が滑り込む音が聞こえた。
厚手のゴブラン織りのカーテンを手繰り寄せ、窓の外を見下ろす。

…華やかな振り袖姿の光の手を大切そうに握りしめ、屋敷の中へと入ってゆく礼也の姿が見えた。
遠目にも、二人が愛に満ちた眼差しで見つめ合う姿が認められ、暁は淋し気に微笑む。

カーテンを閉める。
…二人は今夜、結ばれるのだろう…。
兄は…礼也は…あの逞しく美しい身体で、光を優しく抱くのだろう。
…兄が光を抱く…。
暁の胸に、黒く濁った感情がこみ上げる。

…祝う気持ちなんて、本当はこれっぽっちもない。
自分は光の貌など見たくないほど、彼女を憎んでいるのだ。
…暁を地獄から救い出し、愛情を込めて大切に育ててくれた兄…
美しく優しく完璧な男性…。
…大紋を失い、心の拠り所だった月城に去られ、自分を温めてくれた風間もいない今、礼也だけが最後の砦だったのだ。
その兄すら今、暁は失おうとしている。
奪おうとしているのは光だ。
…女というだけで…兄に愛されているというだけで…美しく傲慢な女…光は礼也を独り占めできるのだ。

暁は醜い自分の心を振り払うかのように、首を振る。
…いや、光さんは何も悪くはない。
そんなことは分かっている。
自分はただ嫉妬しているのだ。
愛する兄に、身も心も無条件に愛される光を…
羨ましく、妬ましく、気が狂いそうになるくらいに嫉妬しているのだ。

…兄さんは…どうやって光さんを抱くのだろうか…。
あの美しく逞しい兄の肉体が、光を抱く様を思い浮かべ…あろうことか欲情する。
暁の心の奥底にある、兄への禁断の淫欲が溢れ出す。

そして、そんな浅ましい自分に絶望する。
…僕は…最低だ…最低だ…最低だ…!
暁は寝台に身を投げ、声を押し殺して泣き続けた。






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