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暁の星と月
第13章 暁の星と月
暁は再び夜空を見上げる。
…こんな風に、春馬さんと夜空を見上げたことがあった…。
初めて男と激しく愛し合い、自分が男との性交で感じるのだと思い知らされたあの夏の夜…。
あの夜は…先が見えない未来が不安だった。
今だけ、幸せならそれで良いと自分に言い聞かせていた。

…けれど今は違う。
暁は月城の大きくひんやりとした手を握りしめる。
月城はすぐにその手を握り返してくれた。
…今は、この男との未来を信じられる…。
信じて、夜空を見上げられる。

「…光さんの赤ちゃんのお祝いを買いに行きたいんだ。
…少し早いけれど、光さんも楽しみに準備していたから…。今度の休みに一緒に選んでくれる?
僕はそういうものを買ったことがないから…」
さもない話をするのが幸せすぎてたまらない。
「喜んでお供します。どのようなものをお考えですか?」
月城が手を握りしめながら答えてくれた。
暁は白くほっそりした手で、夜天の月を指さす。
「…あの月みたいに綺麗な黄色い産着がいいな…。
まだ男の子か女の子か分からないから…どちらでもい…」
…指さす手を握りしめられ、引き寄せられる。
「素敵です…」
青白い月の光に照らされた月城の貌は彫像のように端正だが、そこには温かい愛の表情が滲んでいる。
ひんやりとした美しい手が暁の貌を包み込む。
その手に手を重ねる。

「…ねえ、これからできるだけたくさん君と暁の星と月を見たいんだ…」
月城は端正な眉を上げる。
「暁の星と月…?」
「…明るくなった夜明けの空に浮かぶ…消えそうで…でも決して消えない星と月…。
僕の希望の星と月なんだ…」

…それを君と見たい。
たくさん見たい。
呟く暁に月城は微笑った。
「永遠に、お見せしますよ…」
「永遠に?」
「永遠に、お見せします。…なぜなら私達は、永遠に一緒だからです」
月城の真っ直ぐな眼差しが暁の心を射る。
…永遠など、信じられなかった。
信じてもすぐに砂の城のように脆く崩れゆくものだったから…。
だが、今は信じられる。
月城といる限り…このひんやりとした手が自分を包み込んでくれている限り…

暁は少し照れたように…潤んだ美しい瞳で微笑った。
「…愛してる…」
同時に囁く。
二人の貌が近づき、永遠のようなくちづけが交わされる。

…暁の星と月は、いつも二人の頭上に輝いているのだ。

〜la fin〜




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