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暁の星と月
第11章 クリスマスの贈り物
「暁、すまないが今日は会社は休んで光さんについてやってくれ。
三越の外商も来るし、屋敷を色々案内してやってほしい。光さんに好きな部屋を選んでもらってくれ」
朝食の席でそう暁は礼也に頼まれた。
「私は麻宮侯爵に詫びを入れに行く。…門前払いかも知れないが、誠意を示したいからね」
「お父様に会いに行って下さるのはありがたいけれど、暁さんにまでご迷惑かけるのは申し訳ないわ」
困惑したように答える光に、暁は微笑んだ。
「僕は構いませんよ。レストランの方も一息つきましたし。…兄さん、お気をつけていらしてください」
礼也はいつもと変わらない優しい笑みを浮かべる。
「ありがとう、暁。…今夜は早く帰るよ。…三人でクリスマスを祝おう」

出かけしなに光は礼也に抱きつき、唇にキスをした。
「いってらっしゃい、礼也さん。…愛しているわ」
礼也は逞しい腕で光を抱きしめると、甘く囁いた。
「私もだ。…愛しているよ…光さん。…これからは毎日一緒だ…」
背後に居並ぶメイド達がざわめき、家政婦の彌生に睨まれる。
兄の西洋式の挨拶は慣れているはずの暁だが、二人の濃密な愛の挨拶には胸が騒ぐ。
…お似合いのお二人だ…。
分かってはいるが、寂しさが拭いきれない。
…兄さんにはもう愛する人が出来たんだ…。


火急に駆けつけた麻宮侯爵家の家政婦は光の身の廻りのものを持参し、支度を手伝った。
光はほどなくして洋装に着替え、暁のいる居間に戻ってきた。
琥珀色の肩が露わなドレスは本来は昼間に着るものとしては派手であったが、光の自由闊達な個性に良く似合っていた。
女性の容姿に興味がない暁ですら、思わず見惚れたほどだ。
古参の家政婦は光のアクセサリーを直しながら
「まあまあ…本当にお嬢様ときたら…なんて突拍子もないことを…!昨日は大変な騒ぎだったのでございますよ」
家政婦は暁に見合いの顛末を話して聞かせた。
「縣男爵様が、突然現れてお嬢様を連れ去っておしまいになって、お見合い相手の山科子爵夫人はカンカンにお怒りになられましてね」
「ねえ、お母様は?やはりお怒りかしら?」
光は屋敷で静養している病気がちな母が気掛かりだった。
家政婦はやや呆れたように告げる。
「奥様は…あらまあ、光さんはハンサムな縣男爵と駆け落ちなさったの?と可笑しそうにお笑いになられました…」
光は弾けるように笑った。
「さすがお母様だわ!」


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