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暁の星と月
第12章 堕天使の涙
光の部屋には初めて入った。
結婚を機にその部屋は光好みのウィリアム・モリスの壁紙に張り替えられ、フランスから輸入した最新流行の家具や装飾品がセンス良く配置されていた。

赤い革張りのソファーには編みかけの黄色い毛糸の小さな靴下が置かれていた。
赤ん坊のものだろう。
…あまり上手ではない…しかし、一生懸命編まれていることが分かるものだった。
暁の視線を感じたのか、光は恥ずかしそうに肩を竦めた。
「…家政婦の彌生に習っているんだけど…全然うまく編めないの。彌生には、呆れられるし…私って女性らしいことまるでだめなのよね」
「そんなこと、ないです。…光さんの愛情が感じられます」
光は優しく笑う。
「ありがとう。暁さんは本当に優しいわね」
光は暁に椅子を勧めた。
光と二人きりで話すことは初めてだ。
少し緊張している暁に、光はまるで天気の話をするかのように話しかけた。
「私ね、暁さんに聞いて欲しいことがあるの。
私と礼也さんの馴れ初め…。話したこと、なかったわよね」
「…ええ。…パリで偶然再会されて…光さんが勘当されていたから、兄さんが仕事を紹介されて…と、伺っておりますが…」
…その後は光がフランス人の恋人と別れ、光と礼也はお互いに好意を持ちながらも離れ離れになり、日本に帰国後、礼也が見合いの席から光を略奪したのではないのか…。

光は真摯な表情でゆっくりと口を開いた。
「…私ね、フランス人の画家の恋人との仲を実家の父に反対されて、勘当されたの。スイス銀行の預金も封鎖されて、兵糧攻めよ」
麻宮侯爵は激しい方なのだなと暁は驚いた。
「…恋人の学費や絵の具代や家賃や…兎に角お金が必要でね。働こうにも日本人コミニュティには父が手を回して、割のいい仕事はできなかったし…仕方なくある所のドアを叩いたの」
「…どこですか?」
暁は恐る恐る尋ねた。
「悪名高きピガール通りのストリップショーの店よ」
光の美しい紅い唇から信じられない言葉が飛び出した。
「…え⁈ストリップて…あの…」
しどろもどろの暁に光は淡々と頷く。
「そう。服を脱いで酔客の前で踊るの。…すごくギャラが良かったの。
…外国人の…なんの資格もない女が高額なお金を稼ごうとしたら、そんな仕事しかなかったのよ」
…信じられない。誇り高き侯爵令嬢の光が場末のストリップショーに出ようとしていたなんて…!
暁は固唾を呑んだ。


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