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愛してるから罪と呼ばない
第3章 真夏の花達
「ゆうりにあんな美は求めない。それは、縛って痛めつけて、限界まで頑張る女の子は素敵。いじらしいわ。白い肌には、ビビットな拘束具がとっても似合う。でも」
二人の指と指とが隙間を埋め合い、恋人繋ぎのかたちになる。
「ゆうりにそういうことしては、もったいないわ。貴女は私の美しいドール。せっかくの顔も声も、ありのままが大好きなの。肌に傷でもついちゃったら、貴女の魅力が台なし」
「それって、蚊にもさされるなってことじゃないですか」
「ふふっ、そんな蚊は、生かしておけない」
真剣みを帯びた唇が、愉快そうに綻んだ。
「沙織様」
ゆうりは沙織の片手を引いて、締まった筋肉の巻くウエストに腕を回す。
昨日は悪戯に拒まれたキスを、今度こそ、有無も言わせず奪う。
「んっ、はぁ……んんっ」
「綺麗です……沙織様……ん、貴女は、ありのままで……」
人間が怖かった。いつでも悲観的に世界を視ている自分自身が下らなかった。
誰に自分を晒すのも怖くて、寂しさだけ持て余してきた。
それでもゆうりが沙織を信じられたのは、自ら彼女に囚われたいと望んだのは、諦念でもない。同情でもない。
沙織は自分自身を擲って、会社という彼女の心の在り方を、その魂がぼろぼろになっても守ろうとしている。それは誰にでも出来ることではない。
ゆうりは、この悲しく美しい人を慕っている。
沙織が彼女の配偶者の所有物なら、ゆうりは彼女の所有物で構わない。