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契約的束縛・誘惑なる秘密
第27章 香港―苦痛とメモリー

『美波、愛しているから言うんだ。
先の無い俺より、先のあるアイツらを選べ、それが最後に俺がお前やアイツらにしてやれる事、違うか美波?』
『私……私っ!!』

血が付いていない方の手で美波の頬を掴み、触れるだけのキスをする。それが俺が出来た最大の事。

『……。
俺が居なくても、もう大丈夫だな?
強くなったからな美波は……』
『強くなんか……ないよ……。
私を強くしてくれたのは……櫻澤さんなのに……』

涙を流す美波。その涙を拭う俺。拭っても拭っても美波の涙は止まる事を知らず。……そんな最中に俺は思い付いた。

『持ってろ。こんな物しか無いが……』
『……ピアス……』
『偶々持っていた。
Cross selsの階級ピアスって所が情けないが……』

そうだ、金のリングに金の十字架のピアス。あれは動くことも出来なくなってしまった俺が、美波に渡した物。元々は俺の……ピアス……だった。

完全ではないが、ハッキリと思い出した!
色彩は変わっているが、サザンクロスが美波だという事も理解出来る。そして俺が……櫻澤霧斗だということも!!

その時、俺とユウウンの間に『シュンッ』という風の通る音が聞こえ、少し後に拳銃の発砲音。だが、銃弾は俺には当たらず、変わりにユウウンの腕が宙を舞っていた。

「許さない。貴方も、貴方の周りにいる者も全員。私の怒り、貴方方の命をもって償いなさい!」
「……っ!!」

この劇場全体に恐ろしい風が舞う。俺は知っている、この先がどうなるかを。
駄目だ、止めるんだ、血を流す事を好まなかっただろう……美波っっっ!!!!

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